2015年11月30日月曜日

ノゲシ(野芥子)


●「芥子」は「カラシ」と読むが「ケシ」とも読む
●「芥子」と「辛子」の違い
「ノゲシ」は日本に古くからある在来種で、10世紀頃の書物にも「尓加奈(ニカナ)」と載っています。「ニカナ」は「苦菜(にがな)」で、食べると苦いという意味です。ですが他にも「苦」とつく植物はいくつかあり、つまり「苦い味の菜っ葉」というジャンルに属しているという意味になります。この「ニガナ」が「ノゲシ」になるまでには複雑な経緯がありますので順番に説明していきます。

まずは登場人物の紹介からです。
①「ニカナ(ノゲシ)」キク科の在来種。この話の主人公。
②「カラシナ」アブラナ科の在来種で昔の呼び名は「加良之(カラシ)」。その種子を「芥子(カラシ)」といい、そこから作られた調味料が「辛子」になる。
③「ケシ」ケシ科。平安〜室町時代に渡来。阿片が採れる。

「芥子粒ぐらいの大きさ」という表現はとても小さなモノという例えで、元々は仏典からきた言葉です。今は「ケシツブ=ケシの花の種」ですが、仏典が指しているのは「カラシナ」の種です。変わってしまったのには理由があります。中世になって、ある植物が日本にもたらされました。その植物の種子が「カラシナの種子」に似ているので、そちらは「ケシ」と呼ぶようになりました。「芥」は「ケ」とも読みますから、「芥子(カラシ)」と「芥子(ケシ)」になります。字を見ているだけでは混乱しますが、発音を聞けば違いは分かります。そのうちに「カラシ」「ケシ」は種ではなく植物自体を表すようになりました。

ここでようやく「ノゲシ」の登場です。それまでは「苦菜」というジャンル名で呼ばれていましたが、新たに名前を付けることにしました。「サクラ」の1つを「ヤエザクラ」と区別して命名するのと同じことです。葉の形が「ケシ」に似ており、また植物を傷つけると白い乳液を出すという共通点もあり、そこから「野に生えているケシ=ノゲシ(野芥子)」と名付けられました。つまり渡来してきた植物の名前を、もともと生えていた在来種の名前に使用したのです。

ノゲシ/キク科/ノゲシ属
写真&イラスト:zassouneko

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