2015年12月4日金曜日

カタバミ(片喰)

●葉はハートを3つ並べた形
●片喰は「片一方を食べたの意味」

10世紀頃の書物に「加多波美」「加太波美」(カタハミ)とあります。「食む(はむ)」は「食べる」の古語で、やわらかく上品に表現したものです。「飯を食う」と「ご飯を食べる」の違いといったところでしょうか。「食」と「喰」は意味は同じですが、「喰」は食べることを強調するために日本で作られた漢字です。武士が主君に仕えて給料をもらうことは「禄をむ」ですが、牛馬が草を食べるのは「草をむ」になります。

「片喰(食)」は「片方を食べる」の意味ですが、一体何を食べたのでしょうか。答えは葉っぱの半分を食べたのです。ところが実際の葉は食べられていませんし、そもそも誰が食べたのでしょうか。何か神話や故事があるのだろうと思われるでしょうが、それもありません。

「カタバミ」は「オジギソウ」のような睡眠(就眠)運動を行います。刺激や温度、日光などの影響で、ハートの垂直線を谷折りにして葉を閉じることがあります。半分を切り取ってしまったかのような見える形になる場合もあるのです。例えるなら「開いていた本を閉じるように」といったところでしょうか。いつの間にか葉の半分が無くなっているように見えるので、それを「片方を食べられた」と表現したのです。

写真は「オッタチカタバミ」です。普通の「カタバミ」と違って上に伸びていきます。写真を見れば、葉を閉じる様子がお分かりになると思います。
カタバミ/カタバミ科/カタバミ属
写真:zassouneko

2015年11月30日月曜日

エノコログサ(狗子草/狗尾草)


●動物の尾という表現は世界共通

「エノコログサ」は漢名(中国語)で「狗尾草」と書き、穂の見た目が狗(イヌ)の尻尾に似ていると思われたからです。10世紀頃の日本では「恵沼古久佐(エヌコクサ)」と呼んでおり、その理由は中国と同じでしょう。「エヌコクサ」は「狗(犬)仔草」でしょうから、「エノコロ」の「エヌ」は「犬」だろうと見当はつきます。

では「コロ」とは何のことでしょうか。そのヒントはiMac(Leopard搭載)の国語辞典にありました。「コロ」は「子等(こら)=子供たち」の昔の方言で万葉集にも歌があると載っています。つまり「イヌコロ(犬の子たち)」です。今でも「犬コロ」って言いますね。なぜか「猫コロ」とは使いませんが。この「コロ」は親しい人に対しても使っていたようで、悪い意味(蔑み)ではなかったようです。ここで疑問なのは、なぜ「子等(コラ=コロ)」と複数形になるのかということでです。理由として考えつくのは「エノコログサ」は必ず数本がまとまって生えていますので、それが、複数の「犬の仔」が尻尾を上げているように見えるということぐらいでしょうか。

柳田國男は「エノコロ」とは犬を呼ぶ際の「犬来よ(イヌコヨ)」からきた、という説をあげています。また他の学者は「イヌコロ」が転訛(訛って)したという説を主張しています。19世紀には「エノコログサ」と呼ぶこともあったようですが、それも数多ある別名の一つにすぎず、その名前が前面に出てきたのが何時なのかは分かりません。

英語ではfoxtail grass(キツネの尻尾草)、アイヌの人たちはチャッペ(猫)と呼んでいたそうです。いずれにしても動物の尻尾です。日本では別名の「ねこじゃらし」の方が有名だと思います。仔犬の尻尾で猫を遊ばせる訳です。

エノコログサ/イネ科/エノコログサ属
写真:zassouneko